大宏園|Daikouen

ホーム

コラム

私が考える雑木の庭(前編)

山ガールが流行したり、日本の自然が世界遺産に認定されたりと日本人が日本の風土を見直す動きが高まっています。そんななか、「雑木(ぞうき)」の庭づくりがトレンドになりつつあります。「雑木の庭」のルーツや庭に取り入れることによって生まれる味わい、私が雑木の庭づくりに目覚めるきっかけをくれた恩師との出会いを紹介します。

雑木の庭の中心である、そもそも雑木とは何か

今こそ、庭のトレンドになっている「雑木(ぞうき)」ですが、雑木とは、元々使い道のない木のことを言ったものです。人の手によって植林されたスギやヒノキなど建材用の針葉樹の山を黒山と呼び、それ以外の経済的価値の低い広葉樹が多い林を、雑木林と呼んだのです。

雑木が庭に使われるようになったのは、昭和初期のこと。雑木の庭がもてはやされる創世記が、「雑木の庭」の創始者、飯田十基によって始まりました。マツやマキなどを使った従来の庭に対し、飯田十基がつくったのは、自然をそのままはぎとってきたような庭。飯田十基は、それまでの庭を作庭式、自分の庭を自然風土を呼び、区別しました。雑木には、モミジ、シイノキ、エゴ、シデ、ナラ、コナラ、クヌギなどがあります。

というわけで、昔から雑木は使われていたのですが、近年、「雑木の庭」が再び注目されるようになったのは、人々の自然に対する視線が変わってきたことがあると思います。若い女性がファッショナブルな服装で山を登る「山ガール」といった現象や、知床や白神山地などの世界遺産の認定で、日本の風土、自然が見直されているのではないでしょうか。

今の住宅事情も関係があるでしょう。現代の一般的な建築物に、マツは合わない。コニファーはすぐ枯れる。作り手もわかってきたのでしょう。

私がよく使う雑木は広葉樹の中でも落葉するものです。四季の変化によって、新緑から紅葉まで楽しめるだけでなく、窓際に植えれば、夏は日よけとなり、冬は落葉して、日差しを部屋の中に取り入れることができます。とくにモミジが大好きで、ヤマモミジ、オオモミジ、ハウチワモミジ、コハウチワモミジ、イロハモミジなどと6種類の自生種のモミジを使い分けています。モミジは、枝振りが直立しないので、枝と枝とがかぶりやすいところに大変味わいがあります。

雑木の庭をつくることになる私の、人生を大きく変えた恩師との出会い

私が造園の道に足を踏み入れるきっかけとなったのが、恩師である赤塚造園の赤塚恒夫さんとの出会いです。

出会いのきっかけは、中学生のころ通っていた家の近所の釣り堀。私は「へたくそな親父だな」と、赤塚さんは「生意気な小僧だ」とお互いを思っていたようです。高校に入ってから、赤塚さんが、友達の家の庭をつくっているところに遭遇。高校2年から赤塚造園でアルバイトをさせてもらいました。

赤塚さんも自然が好きな人で「今日は仕事の気分じゃないな」なんて言って、一緒に山に入って遊んだり、私が釣りを教えてあげたりしたこともありました。

バブルが頂点のころの庭は雑多で、旧来通りのマツの庭もあれば、レンガを敷いた庭もあるといった様相でした。赤塚さんは栃木の山の中で育った人で、落葉樹を庭に使っていました。春先に、山の木を掘って庭に使うのです。バブルでにょきにょき家が建って、いろんな人がいろんな講釈で庭づくりをしているなかで、落葉樹をつかった庭づくりをしていた赤塚さんに指事したのは私にとって大きなことでした。