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コラム

庭の品格~ガーデニングブームが去って~

時代の流れとともに求められる庭の形が変化しています。今からおよそ10年前のガーデニングブームに人気だった花いっぱいの洋風の庭。大島が考えるこれからの日本の庭について、まとめました。

長らく庭づくりに携わっていると、時代の流れとともに求められる庭の形が変化していくことを実感します。世の中が、ガーデニングブームにわいたのは、今からおよそ10年前。バブルが弾けた後とはいえ、まだまだ活気が残っており派手な洋風住宅が人気でした。そこで、隆盛を極めたのが、コニファーやコテムラの塗り壁のある花いっぱいの洋風の庭。イングリッシュガーデンという言葉流行りました。

今、その頃つくられた庭がはやくもだめになってきているのが現状です。それもそのはず。コニファーやオリーブは手入れをしないと10年で枯れる。アクリル樹脂でコテムラをつけた西洋のまねっこをした塗り壁は、汚くなってくる…。当時は熱で浮かされたように、お施主さんも作り手もブームに踊っていましが、今、目からうろこが落ち、日本本来の庭のよさに気がつく人が増えています「モミジやヤマシャクヤクのある庭がいい」というお施主さんが増えてきてる。以前は圧倒的に「洋風の庭にしてほしい」という依頼ばかりだったのが、「洋でもなく和でもない庭がいい」という依頼に変わりました。

これからの日本の庭

時流は「派手な庭」ではなく、「目立たず目立つ庭」「さりげなく目立つ庭」ではないでしょうか。日本人の「品」が見直されているのを感じます。古い石畳や年輪を感じさせる木など、古さを感じるものに対していいなと思う人が多くなっています。また、石畳の目地がぴしっと決まっている庭や木々の選定がきんとしてある庭など、腕のある職人が手をかけている庭には、自然と色気や品が出るものです。

最近、目にした五木寛之の本にこんな言葉がありました。「敗戦から見事に登頂を果たした今こそ、実り多き、「下山」を思い描くべきではないか」と。みんなが旨いものを食べなくてもいいじゃないか、少しぐらい寒くてもいいじゃないか。今日、私は、大鷹が神奈川の空を飛んでいるのを見かけました。それだけで私は一日幸せな気分になります。敗戦から立ち直るには、利便性、金欲が必要だったかもしれません。しかし、資源の枯渇や自然破壊に直面している今、山下りながら、日本も自然に対する付き合い方を学ばなければいけません。

今こそ、日本人の根本的なものを考え直さなくてはいけない時期に来ているのではないかと思うのです。忙しいのは、わかるのですが、庭を眺めるだけではなく、庭に出て、木々や草花に触れてほしいと思います。山に分け入って釣りをしていると、「携帯もテレビもいらないなあ」と思うことがあります。少しずつ余分なものをそぎ落としていって、最終的には、晴耕雨読が私の理想ですね。みなさんの一番身近にある自然である庭が、そういうものを考えるきっかけになるといいなと思っています。